Stock Orchestra

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INFORMATION

STOCK ORCHESTRAは、延々とループする複数の音素材を「再生」と「ミュート」で編集し楽曲を構成する仕組みで作られた鑑賞型のウェブサイト。それぞれの音素材はアニメーションと同期しており、プログラムの運動を映像で観ることができる。5種類の楽曲映像を観賞できるPLAYモードと、ユーザー自ら楽曲を作成できるMAKEモードの2つのモードで構成されている。グラフィック素材と音源素材は無料でダウンロード可能。ここでは素材価値より編集価値を重要視した考え方で企画を進めている。

STORY

浅野とかずおが、とあるVJイベントの帰りにしたモーショングラフィックの運用に関する雑談がきっかけ。ウェブエンジニアの白石を誘い、ウェブ上で展開するプロジェクトを始めた。当初は映像付きのミュージックサンプラーのようなものを考えていたが、その後音楽制作として参加した四宮と玉田の用意したサンプル楽曲が、展開性を持ったものになっていたため、イメージをオーケストラに変更して展開することにした。 使用する素材の仕様は、4分音符1拍単位で編集可能な4小節尺と決定し、グラフィック素材は記号性を持ち、組み合わせで異なる詩を生むものにし、音素材は生音を中心に集め、編集次第で様々な使用可能なものにした。 初めは、それらの全てバラバラの絵と音の素材をブラウザ上に配置して、プログラムでそれぞれの動作を管理をしていたが、どうしてもパフォーマンスの問題により、動作のタイミングにズレが生じていた。試行錯誤の果て、魂を込めた妥協(by映像研)で統合映像を画面に映し出すことにした。当時のプログラム管理方法はMAKEモードに使用されている(素材の使用数が少なければ可能)。その後なんやかんやのデバッグ期間を経て発表に至る。

CREDIT

Date: 2020 / Project Direction: Asano Takamasa🥜 / Music: Shinomiya Motoki🥜, Tamada Kazuhei🥜/ Graphic Design: Asano Takamasa🥜 / Animation: kazuo🥜 / Engineering: Shiraishi Ryo / Special Thanks: Sasaki Kodai, hydekick™, Machida Yosuke, Yokoi Erika, Yamada Tetsuya

CREDIT

Date: 2020 / Movie: kazuo🥜 / Graphic Design: Asano Takamasa🥜 / Music Edit: Tamada Kazuhei🥜

TEXT

kazuo

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StockOrchestra(以下SO)のモーションについて色々。SOがどういった経緯で制作するに至ったかは上述されているので、ここではもっと具体的で狭く、専門的ではなく個人的なモーションについての雑記を綴る。
今回の制作で留意した点は「アフターエフェクティブな印象にはしない」というものがある。キーフレームやイージングといった利便・再現性からはある程度距離を置きつつベクターデータを取り扱った。具体的には、まず手書きでプレビズを作る、それをAEで清書するといった流れを取った。これにより人の手が加わった気配が備わりつつもAEの機械的な処理で個人性を脱臭することで、詠み人知らずなモーションが生まれるのではないかと考えた。

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全55種類が完成するまでの制作期間は2017年2月22日〜2018年10月20日の約1年8ヶ月(ラフ期間含む)。まあまあ長いこと時間をかけた制作だったように思う。まずはどんなものにするかを検討するため、浅野の作ったグラフィックにモーションを付けるという流れでラフ制作に入った。

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考え方や見通しが定まるにつれ制作の前半と後半で作り方が変わることは往々にしてあり、例に漏れずSOの制作も同じ道を辿ることとなった。詳細な話はグラフィックの項でされると信じ、ここではざっくりと『グラフィック先行』から『サウンド先行』に切り替わったとだけ説明。

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『グラフィック先行』=「こういうモチーフがイケてる」という感覚は平面設計においてとても重要で、それはグラフィックデザイナーである浅野も僕も持っているがゆえに嵌った落とし穴でもあった。一つのループアニメーションとして見るとそれなりに良いものだったが、いざSOでの素材として扱うと全くその良さが現れずまあまあ落胆した記憶がある。一拍単位で切り刻める音源・動画素材として成立していなかった。つまり『動画』ではなく『素材』を作るという意識がすっぽ抜けていた。良いところでチャンネルを変えられるような動画群では、当然面白みよりもフラストレーション※1のほうが立ってしまう。そのため『サウンド先行』=音をきっかけに動かす、ほとんど同期されたモーションで再検討。音につれて動いているのだから、どの拍で終了しても見栄えがして違和感が見えづらいのではないかと考えた。

※1
フラストレーションといえばSO制作の中盤まで自分が抱いていた観念でもある。元々アニメを描いていたこともあり他人が作ったグラフィックを動かすということにモチベーションを持てなかった、というか今でもそう。ただそれを貫いたところでより良くできる見通しはないこと、浅野の作ったグラフィックのほうが断然カッコよかったことから、モーションに徹したほうがSOは良くなるだろうと思い直す。加えて別件で話した先輩に「あんたはアニメよりモノを動かすパラメータのほうが高い」と言われて以降は邪念なく制作できた。真意はさておき褒め言葉として受け取っている。

なんでも一人でやりたいというマインドは、モチベーションとして健全で尊重すべきものだと思う。とはいえ両手を広げた直径が決まっているように影響範囲はある程度決まっていることも事実。こうした制作意欲は、作業者同士の職能が重なっている際には摩擦にもなり得る。といっても気を遣って身を引き小さな不満を溜めることではなく、むしろこれについて都度コミュニケーションすべき事項だと思う。クライアントワークであれば「今回はこのロールで」と割り切れる話でも、当人のモチベーションが集まって進行されるプロジェクトにおいては、その小さなヒビから瓦解に発展しかねない。「自分もそれやりたかったのに」という気持ちが肥大化した先にプラスはないと感じた。適宜行われた浅野との会話で、わだかまりを抱えたまま制作していると相談した際に気付かされた視点だった。フラストレーションがある、その上でどういった進行が適切かと話を積み上げてもらえたことはありがたかった。面倒なことなので。

個人の影響範囲はある程度決まっているという話の補足。両手の直径と制作の違いは積み上げていく時間にあり、一人でやっていたとしても死ぬほど時間をかければ1作品で4TBのストレージをパンパンにすることだってできる。独占的で支配的な作品に宿る狂気だって間違いなくあるので、完全な個人制作を1つ持っておくことも作業者としての深みや臭みやコクに繋がるはず。別にそれは専業に紐付いた制作でなくても、最も効率的に大阪城を攻め落とす戦略でもマイぬか床だって良い。

それぞれのグラフィックはサウンドと密接に繋がっている。そのモーションのいちいちが、SOの持つ世界のルールに従っているかのような説得力を持って見えたのならこれ幸い。

TEXT

Shiraishi Ryo

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「当プロジェクトは、『延々とループする複数の音素材を「再生」と「ミュート」で編集し楽曲を構成する仕組み』とあるように、再生とミュートの制御をプログラムから行うことを目的としていた。中身はプログラムが譜面をなぞっているだけだが、グラフィックとアニメーションの有機性も相まって、無機物であるプログラムにある種の息遣いのようなものが感じられる可能性に興味を感じ、トライ&エラーを繰り返していた。 しかし、上述の通りパフォーマンスの問題により、その"プログラムの運動"の結果は映像内に収束させることとなった。結果、プログラムが譜面をなぞるという行為は、コンパクトなサイズとなってMAKEモードのみで発揮されている。試作段階では、React.jsで構築していたが、DOMの操作が増えたことにより泣く泣くjQueryでの実装に切り替えた。開発初期では感じなかったが、フロントエンド技術の進歩により、今ではすっかりレガシーな言語でリリースすることになった。動画や音声といったメディアを操作する知見の少なさを痛感した瞬間であった。

技術的な面白みは少し薄味になってしまったかもしれないが、個人的に面白みを感じているのは、音源と画像素材を無料でダウンロードでき、MAKEモードではこのウェブサイトで使われている音源とアニメーションのアセットを使い、自分でも簡易的な楽曲を作成できる点である。 独自の作家性・発明性をめぐるデザインの話題が度々世の中を騒がせることがあるが、偶然にも当プロジェクトは、それに対する一つの姿勢になっているようにも思う。エンジニアリングの世界ではOSS(オープンソースソフトウェア)という様式が常識のように存在するが、当プロジェクトもまた、それに該当する。フォーカスしているのは、意匠そのものではなく、それをどのように運用するかということである。 MAKEモードでは、55種類の素材から8種類をランダムに抽出するので総組み合わせ数は膨大になるが、その中で感覚的に気持ちの良い組み合わせが可能になるのは実はそんなに多くない。時間の許す限り挑戦してみてほしい。

当初、白石も正規メンバーとして活動予定だったが、紆余曲折ありゲストとしての参加となった。理由は明快で、当倶楽部の活動趣旨である「ただちに有効でなくても、可能性を感じられる提案、もしくは娯楽を提供できること」を持続的に続けることができないからだ。言い換えれば、「ただちに有効で、経済的効果があり、現在の社会に意義を持つこと」、つまりはビジネスライクな行動が現在の私の興味の対象である。 ただし、即物的で換金価値の高い仕事だけが社会的価値の高い仕事とは思わない。インディペンデントな仕事というのは、そこに加わる個人はもちろん、将来の社会に対する布石だと考えている。YPはそのように前向きで、趣のある摩擦を提案する欲が強い集団だと感じた。彼らが本腰を入れ、ビジネスという道具が必要な場面が来た時は力添えをしたいと思う。そんなシーンをひっそりと期待している。

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